「ダブルチェックを徹底します」――。この記事では、ビジネスの現場で起きるこの現象の裏にある「OSのバグ」を、アーキテクトの視点で解剖します。
よくある場面
新入社員時代、前任者から引き継いだExcelファイルを編集していた時のことです。 ファイルを開くと、一部のセルに謎のマーカーや文字色が設定されていました。しかし、どこを見てもその色分けの「凡例(ルール)」は書かれていません。 「まあ、本質(今回の編集タスク)には関係ないし、放置でいいか」と、私はそのまま自分の担当箇所だけを修正しました。
しかし後日、偉い人たちにその資料を共有する会議の場で、恐れていた事態が起きます。
「この赤いマーカーはどういう意味?」
当然、私は答えられません。後で調べてみると、その色分けは過去の特定のプロジェクトのみで使われていた、現在では【完全に意味を失ったレガシー(遺物)】でした。
私が引き継いだ時点でその色を「削除」してしまえば何の問題もなかったのです。しかし、「本質に関係ないから」と歴代の担当者が全員スルー(放置)し続けた結果、時間の経過とともに変更の経緯が誰にも分からなくなり、会議の場でデッドロック(処理の停止)を引き起こしました。
ビジネスの現場で起きていること
実はこれ、Excelの些末な問題に見えて、ビジネスの本筋で起きている「致命的なシステムエラー(技術的負債)」と全く同じ構造です。
仕事でミスが起きた時、現場はどう対応するでしょうか?
「マニュアルを遵守した上で、次からダブルチェックを徹底します」
多くの人がこう答えます。
しかし、これは対策になっていません。そもそも最初のチェックプロセスを通しているのにミスが起きている時点で、そのプロセス自体が破綻しているからです。
本当にミスを根絶したいなら、「ダブルチェックを追加する(足し算)」のではなく、「ミスが起きるプロセスそのものを無くせないか、簡略化できないか(引き算)」を考えるべきです。 それなのに、なぜ人は常に既存のプロセスにフローを追加する「足し算」でしか物事を解決しようとしないのでしょうか?
結論から言えば、実行者(QA層)は、ルールの「スクラップ&ビルド(破壊と創造)」が根本的に苦手だからです。
彼らは、目の前にある既存のルールやプロセスが「どのような背景・目的で設置されたか(要件定義)」を知りません。 彼らにとって既存のプロセスは、触ると何が起きるか分からない「不可侵のブラックボックス」なのです。Excelの謎のマーカーを消せなかったのと同じで、「既存のプロセスを消して、もし別のどこかでエラーが出たら自分の責任になる」という恐怖が根底にあります。
秀才層は「すでに用意された構造の中でのハック(最適化)」は得意ですが、「構造そのものを設計・破壊すること」はできません。
だから、既存のプロセス(ブラックボックス)には一切指を触れず、その上に「ダブルチェック」という新しい箱(ルール)をポンと乗せる。これが、組織のルールが雪だるま式に増殖し、誰も身動きが取れなくなる「足し算病」の正体です。
では、どうすればいいのか?
では、この足し算病を患った組織のOSをハックし、実行者に「引き算(プロセスの破壊)」をさせるには、アーキテクト(マネージャー)としてどう動けばいいのでしょうか?
解決策(How)はnoteで公開中
ここから先の具体的な解決策・コマンドは、noteの記事「アーキテクトの過去問」として公開しています。
このテーマを深めるおすすめの本
『ザ・ゴール』(エリヤフ・ゴールドラット)
部分最適の足し算ではなく、全体のボトルネックに手を打つ考え方を物語で学べる。
※本記事は、noteで公開した「「ダブルチェックを徹底します」は思考停止のサイン。組織を腐らせる「足し算の解決策」の罠」の無料部分をブログ向けに再構成したものです。


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