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『念のため、部長にも確認しておいて』――。この記事では、ビジネスの現場で起きるこの現象の裏にある「OSのバグ」を、アーキテクトの視点で解剖します。
よくある場面
町内会の回覧板は、10軒回るだけで1か月かかることがあります。1軒でも留守なら、そこで止まる。しかも全員が「ハンコは押したけれど、ちゃんとは読んでいない」。ほかの誰かが読んでいるだろう、と思っているからです。職場の決裁にも、同じことが起きています。
職場に、作業を自動化する新しい機械を入れる話が出ました。資料をそろえて課長に相談します。数字を見れば、入れたほうが合理的なのは明らかです。課長もうなずきます。
「いいと思う。ただ、念のため部長にも確認しておいて」
部長も「いいんじゃない。念のため、設備担当にも聞いておいて」。設備担当は「うちはいいけど、安全面は総務に」。総務は「課長が起案しているなら、いいと思いますよ」。
- 1週目:課長「部長がOKなら」
- 2週目:部長「設備がOKなら」
- 3週目:設備「総務がOKなら」、総務「課長がOKなら」
誰も反対していません。全員が「合理的だ」と分かっています。それなのに、3週間たっても導入は決まりません。しびれを切らして、次の案件では最初から部長のところへ行くと、こう返されます。
「ちゃんとプロセスを通してから来なさい」
近道をすると叱られ、正規の道を通ると止まる。これは誰かの怠慢ではなく、決裁の仕組みのバグです。
なぜ起きるのか ― バグの構造
「念のため」の正体は、合理性の確認ではありません。責任の確認です。新しい機械は、うまくいかなかったときに「誰が入れると決めたのか」が残ります。だから全員が「いいと思う」とは言っても、「私が決めた」とは言いません。
システムでいえば、承認者は「直列のゲート」です。ゲートを1つ足すたびに、待ち時間は確実に増えます。一方で、責任は人数で割られていきます。承認者が4人いれば、1人あたりの責任は4分の1。回覧板のハンコと同じで、全員の確認が浅くなります。
ゲートを足すほど、待ち時間は足し算、責任は割り算。
さらに厄介なのは、責任の受け渡しが一周してしまうことです。課長は部長を、部長は設備を、設備は総務を、総務は課長を見ている。全員が「誰かがOKなら」と言い合い、決める人が1人もいないまま、ぐるぐる回り続けます。
「プロセスを通せ」という言葉も、ここから見ると意味が変わります。そのプロセスは「決めるための道」ではなく、「責任を分けるための道」になっているのです。あなたの手元で止まっている案件。それを「決める人」の名前を、1人だけ言えるでしょうか。
まず試せる一手:起案の時点で「決める人」を1人書く
相談や起案の最初の1行に、「誰が決めるのか」を書きます。ほかの人は「意見をもらう人」として分けて書きます。決める人が書かれていない起案は、全員が「見ただけ」で終わるからです。
「この件を決めるのは誰ですか? その方の判断に必要な意見を、先に集めます」
- ×「関係者の皆さまにご確認いただき、問題なければ導入したいと思います」(決める人がいない)
- ○「導入の可否は部長に決めていただきます。設備担当・総務には、それぞれ設置と安全面のご意見をいただきます(決定権はありません)」
プロセスには逆らわず、プロセスの中に「決める人」を1人置く。それだけで、「誰かがOKなら」の一周が止まります。
ここまでが、最初の一手です。この一手を習慣にして、同じバグを繰り返さない仕組みにするための残りの手順は、noteで公開しています。
残りの解決策(How)はnoteで公開中
ここから先の具体的な解決策・コマンドは、noteの記事で公開しています。
この記事は、全記事入りのマガジン「アーキテクト思考の教科書」(1,980円)と、柱ごとのマガジン「② 担当のバグ編」(980円)にも収録しています。
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あわせて読みたい:「会議で決まったよね?」/「そっちのボールじゃないの?」
※本記事は、noteで公開した「「念のため、部長にも確認しておいて」で、決裁が3週間止まるバグ。決める人は、1人でいい」の無料部分をブログ向けに再構成したものです。


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