「終電まで頑張りました」――。この記事では、ビジネスの現場で起きるこの現象の裏にある「OSのバグ」を、アーキテクトの視点で解剖します。
よくある場面
「昨日は深夜まで残業して作りました」
「終電まで頑張って終わらせました」
部下や外注からこのように報告された時、あなたはどう感じますか?
「よく頑張ったな」と労う一方で、マネージャー(上司)の脳内では無意識のうちに「そこまで時間をかけたのだから、さぞかし凄いものができているんだろうな」と、アウトプットに対する【期待値】が跳ね上がります。
しかし残酷なことに、徹夜をして出てきた成果物がその高い期待値を超えることはほぼありません。大概は「まあ普通」かそれ以下の質であり、結果として上司の評価は「無駄にコスト(時間)をかけただけ」という冷酷なものになります。
なぜ起きるのか ― バグの構造
なぜ、彼らは「頑張ったプロセス」をアピールして自爆してしまうのでしょうか? ここには、実行者(QA層)が陥りがちな2つの致命的なシステムバグが存在します。
バグ①:手段の選択エラー(スプーンで穴を掘る病)
1つ目は、目的に対するツールの選定ミスです。
「10mの穴を掘れ」と指示された時、ショベルカーを使えば一発で終わります。しかし、彼らはなぜか手元の「スプーン」を使って徹夜で掘り進めようとします。そして30cm掘ったところで「徹夜で頑張りました!」と報告してくるのです。
上司からすれば「なぜショベルカーのリースを手配しない?」という話にしかなりません。スプーンを使って穴を掘っていいのは、映画の中の脱獄犯だけです。 彼らは「自分のCPU(頭や体)をフル稼働させて汗をかくこと」自体が仕事だと思い込んでおり、レバレッジの効く外部ツール(AI、外注、既存のテンプレート)を探すという初期動作をサボっているのです。
バグ②:期待値コントロールの欠如(最大のバグ)
実はこちらの方が本質的な問題です。 ビジネスにおける「価値」とは、絶対的なものではありません。以下の数式で定義されます。
【 価値 = 成果(アウトプット) - 相手の期待値 】
例えば、顧客が冷蔵庫を買おうとしている時、顧客の期待値は「物が冷やせること」です。 そこに「値段は10万円上がりますが、この冷蔵庫は喋るんです!」という機能を徹夜で開発して持っていったとします。顧客は喜びません。なぜなら、値段(コスト)が上がったことで顧客の「期待値のハードル」も連動して上がってしまい、喋るという不要な機能ではそのハードルを超えられないからです。
一方、「値段は据え置きですが、冷凍庫の容量が1.5倍になっています」と言われたらどうでしょう。 値段(期待値のハードル)はそのままなのに、成果がプラスに振れたため、顧客はそこに強烈な「価値(お得感)」を感じます。
提供する絶対的な機能を増やすのではなく、損益分岐点(コスト・期待値)をいじることによって相対的に価値を上げる。これをコンサルの世界では「期待値コントロール」と呼びます。
この視点に立つと、「時間をかける(コストをかける)」という行為は、自ら相手の期待値を釣り上げる最悪の悪手であることが分かります。
「頑張りました」とアピールすることは、自ら「私の成果物のハードルを上げてください」とお願いしているのと同じなのです。
では、どうすればいいのか?
では、この「プロセス(努力)を評価してほしい」というOSを持つ相手に対して、アーキテクト(マネージャー)はどのようにタスクを定義し、無駄な徹夜を止めさせればよいのでしょうか?
解決策(How)はnoteで公開中
ここから先の具体的な解決策・コマンドは、noteの記事「アーキテクトの過去問」として公開しています。
このテーマを深めるおすすめの本
『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)
やるべきことを絞り込み、頑張る場所を間違えないための考え方。
※本記事は、noteで公開した「「終電まで頑張りました」は評価を下げる。努力を価値と勘違いする部下のOSバグと「期待値コントロール」」の無料部分をブログ向けに再構成したものです。


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