(1)執行不停止の原則
行政庁の行った処分は、原則として相手方に到達する事によって効力を生じ、審査請求をしても、処分の効力、処分の執行、手続の続行は妨げられないのが原則です。
これは処分の迅速な執行により公益を実現しようとする考慮によるものです。

(2)執行停止の手続・要件
審査庁が処分庁の上級行政庁であるか否かにより、執行停止の手続・要件が異なります。
①手続
(ⅰ)審査庁が処分庁の上級行政庁または処分庁である場合には、審査請求人の申し立てによるほか、職権により執行停止をすることもできます。
また、この場合には、上級行政庁及び処分庁は、処分の効力、処分の執行または手続の続行の停止以外に「その他の措置」をすることもできます。
「その他の措置」とは、例えば、処分庁の行った免許取り消し処分を暫定的に業務停止処分とすることなどです。
(ⅱ)一方、処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、申し立てにより執行等を停止することができるだけであり、職権による執行停止をすることはできません。
また、「その他の措置」をすることもできません。
②要件
審査庁は、審査請求人からの申し立てがあった場合において、処分、処分の執行、手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、執行停止をしなければなりません。
忠志、この要件を満たしている時でも、公共の福祉に重大な影響を及ぼす恐れがあるとき、または本案について理由がないと見えるとき、には執行停止はできません。
③執行停止の取り消し
執行を停止した後においても、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかになったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができます。