(1)申請の意義
申請とは、「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの」です。

(2)申請に対する審査
さて、このような申請に対して、行政庁はどのように対処すべきでしょうか。
これについて、行政手続法は「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図る」ことを目的として、次のような定めを置いています。
①審査基準、標準処理期間の設定・公表
これらは、行政庁に事前に一般的な基準を定めておくことを義務付けるものです。
これらの基準は、許認可等の処分をする権限を有する行政庁が定めるものですから、国の法令に基づいて地方公共団体の行政庁がする処分についても、国の行政庁ではなくその権限を有する地方公共団体の行政庁が定めます。
(ⅰ)審査基準
行政庁は、許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準を、当該許可等の性質に照らし、できる限り具体的に定めなければならず、行政上特別の支障がある時を除き、事務所における備え付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません。
審査基準は、法令に規定のあることが多いのですが、その定めが抽象的であるような場合は、より具体化した内容を定めておく必要があるということです。もっとも、法令の定めが極めて具体的でその定めだけで判断できるときは、新たに審査基準を定める必要はありません。
(ⅱ)標準処理期間
行政庁は、申請がその事務所に到達してから、当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるように努め、これを定めたときは、事務所における備え付けその他の適当な方法により、公にしておかなければなりません。
到達とは、申請が事務所の文書受付業務を担当する部署に物理的に到着し、了知可能な状態におかれることです。
ちなみに、標準処理期間を定めることは努力義務とされていますが、これを定めた時の公表義務は必要的義務とされています。
②申請に必要な情報の提供
行政庁は、申請者の求めに応じ、審査の進行状況や処分の時期の見通しを示すよう努めるとともに、申請書の記載よび添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めることとされています。
③審査の過程と手続
(ⅰ)一般原則
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく、当該申請の審査を開始し、法令に定められた形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請者に対して相当な期間を定め当該申請の補正を求めるか、または当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません。
つまり、申請の補正を求めるか申請を拒否するかは、行政庁の裁量に任されているわけです。
(ⅱ)公聴会の開催等
行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことがその法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会を開催する等の適当な方法により、その申請者以外の者の意見を聞く機会を設けるよう努めることとされています。
(ⅲ)関連申請の審査の促進
行政庁は、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることを理由として、自らの審査または判断を殊更に遅滞させるようなことをしてはなりません。
また、一つの申請または同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について、複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡を取り、当該申請者からの説明の聴取を共同にして行う等により、審査の促進に努めることとされています。
④申請に対する応答
申請に対して、申請通りの処分をする場合、免許証や決定通知書をこうすれば手続は円満に終了します。
他方、行政庁が許認可の申請を拒否する場合は、申請者に対し、同時にその処分の理由を示さなければならないとされています。
拒否処分を書面でするときは、拒否理由は書面により示されなければなりません。
理由付記の程度は、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して拒否処分に至ったかを了知できる程度のものでなければならず、単に拒否処分の根拠条文を示すだけでは不十分です。
尤も、申請が法令等の要求を満たさないことが数量的指標等から明らかであるときは、申請者の求めがあったときに、処分の理由を示せば足りるとされています。