(1)意義
訴訟要件とは、原告の訴訟上の請求を裁判所に取り上げてもらい、その請求の内容の当否について審理・判決をしてもらうための要件です。
この訴訟要件をクリアしなければ、訴えは不適法として却下されることになります。
わかりやすく言うと、訴訟要件を備えていないと「あなたの訴えは信頼できません」と門前払いされると言うことです。
もっとも、訴訟要件の 心理と翻案の実体審理が同時並行で行われることもあり、その流れの中で訴訟要件を欠くことが明らかになれば、その時点で訴え却下となります。
訴訟要件は多岐に渡りますが、取消訴訟の請求内容に関連する訴訟要件は、処分性、原告的確、(狭義の)訴えの利益の3つです。
処分性とは、取消訴訟の対象となる行政庁の 処分とは何かと言う問題です。
原告適格とは、取消訴訟を提起したものが、「処分または採決の取り消しを求めるに付法律上の利益を有する者」であるかどうかと言う問題です。
(狭義の)訴えの利益は、取消訴訟によって現実に原告の権利救済を達することができるかと言う観点から問題とされるものです。
原告適格も広い意味では訴えの利益に含まれますが、 (狭義の)訴えの利益と多少性質を異にしますから、両者は別個に問題とされるのが通常です。
これらの訴訟要件は主観的訴訟要件、これら以外の法律に定められた訴訟要件は客観的訴訟要件と呼ばれることがあります。
(2)主観的訴訟要件
①処分性
(ⅰ)意義
取消訴訟の対象となるのは、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」です。
つまり、行政庁の行う行為のうち、「処分性」の認められる行為が取消訴訟の対象となり、それが認められないものは取消訴訟の対象とならないと言うことです。
では、取消訴訟の対象となる行政庁の「処分」とは、どういうものでしょうか。
この点について最高裁の判例は、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、 直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」であるとしています。
このように一般的な定義にすると難解な感じを受けますが、さしあたっては、申請に対する処分や不利益処分等すなわち「行政処分」がこれにあたると考えておけば足ります。
生活保護申請に対する拒否処分、営業許可申請に対する許可又は許可処分、営業勉強を受けているものに対する免許取り消し処分、営業停止処分、国税、地方税の深処分などが典型的と言えるでしょう。
これらの行為は、それがなされることによって、いずれも直接に国民の権利義務を形成・確認すると言う方向から生ずるものです。
また、上記のようないわゆる行政処分のほか「その他公権力の行使に当たる行為」として、一定の権力的事実行為が含まれます。
すなわち、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもののほか、関税定率法に基づく税関長の決定・通知や税務署長の行う納税の告知のような事実行為についても、それによって一定の法的効果の発生が認められることを理由に処分性が肯定され、取消訴訟の対象となります。
(ⅱ)処分性が認められない行為
最高裁判例で、処分性が認められなかった行政庁の行為としては、次のようなものがあります。
(イ)通達は、上級行政機関が下級行政機関に対して示達するものであり、行政機関内部で効力を持つに過ぎず、国民を直接拘束する効力を持たないから、処分性が認められない。
また、知事が行う建築許可に際しなされる消防庁の同意は行政機関相互間の 行為であり、大国民との直接の関係においてその権利義務を形成しまたはその範囲を確定する行為ではないので、処分性は認められない。このように行政組織内部での行為については原則として処分性は認められません。
(ロ)公務員の採用内定の通知は、単に採用発令の手続きを承諾を行うための準備手続としてなされる事実上の行為に過ぎず、採用内定の取り消し自体に処分性がないから 取消訴訟の対象とならない、とされています。また、行政指導は、国民に対して直接法的効果を生じさせない日権力的な事実行為であるから、処分性が認められません。もっとも、最近の判例には、行政指導が取消訴訟の対象となるとしたものがあります。
(ハ) ごみ焼却場の設置行為は、単なる事実行為に過ぎず、国民の権利義務関係に直接変動及ぼすものでは無いから、処分性は認められない。
(ニ)都市計画法に基づく用途地域の指定(いわゆる「拘束的計画」)は、一般的抽象的な権利制限を生ずるに過ぎず、これによってその地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったと言う事はできないから、その処分性は認められない。
②当事者能力と原告適格
(ⅰ)当事者能力
訴訟の当事者となるためには、まずその一般的資格として当事者能力を必要とします。
私法上の権利能力者である自然人及び法人には、当然に当事者能力が認められます。
しかし、当事者能力を有するからといって、どのような事件についても直ちに訴えを提起することができるわけではありません。
当事者能力を有することを当然の前提として、個別具体的な要件について、訴えによる解決を図ることが適切かどうかを判断する必要があります。
(ⅱ)原告適格
このように、個別具体的な事件について訴えを提起し得る資格ないし地位を原告適格といいます。
取消訴訟の原告的確は、「処分または採決の取り消しを求めるに付法律上の利益を有する者」に認められます。
法律上の利益が、処分の相手方に認められる事は当然です。
問題となるのは、ある人にとっては利益となる行政処分が、他の人(第三者)にとっては不利益となるような場合です。
つまり、 いわゆる二重効果的行政処分の場合に不利益を受ける第三者に法律上の利益が認められるかどうかです。
これを判断するためには、法律上の利益とは何か、をより精密に明らかにする必要があります。
最高裁判所の判例は、法律上の利益とは、「法律上保護された利益」であるとの立場をとっています。
これは、問題となっている個々の法律の規定の条文の文言・目的等に照らして、その法律の規定が私人に個別的な利益を認め、その利益を保護する趣旨であると考えられるときは、その私人に原告適格が認められるとする考え方です。
原子力発電所の設置予定地の周辺一定範囲の住民がその設置許可を争う訴訟についても、最高裁は、その原告適格を認めています。
この判例は、「原子炉等の規制に関する法律」が単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般的公益として保護しようとしているにとどまらず、原子炉施設周辺に住居し、原発事故がもたらす災害等により直接 かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨であると介することにより、原発立地予定の周辺一定範囲の住民に「法律上保護された利益」を認めたものです。③(狭義の)訴えの利益
(狭義の)訴えの利益とは、当該処分を取り消すことの実際上の
取消訴訟ーその内容と訴訟要件 ②取消訴訟の取消要件
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