(1)意義
行政主体とは、行政を行う権利と義務を持ち、自己の名と責任で行政を行う団体(法人)のことです。
会社は、営利目的の団体ですが、法人格を有しているため、その名で取引行為を行い、取引により生じた権利や義務は会社自身に帰属します。行政主体は、営利活動を行うわけではなく、多種多様な行政活動を行うという点で、会社とは決定的な違いがあります。しかし、行政主体も法人なので、そこに属する構成員(行政機関)が行政主体の名で行った行為についての権利義務及びその責任は、行政主体に帰属するという関係に立つという点で、共通したものがあります。

(2)行政主体の種類
①国及び地方公共団体
(1)国
国は、最も広範かつ強大な権限を持った行政主体です。その行政組織については、のちに説明するように、国家行政組織法、内閣法、各省設置法その他の法律によって詳細に規定されています。
(2)地方公共団体
地方公共団体は、憲法に直接の根拠を置く統治団体です。これには、普通地方公共団体と特別地方公共団体があります。
近時、地方分権が推進され、国から権限や財源が大幅に地方公共団体に委譲されていますから、地方公共団体の行政主体としての地位・役割はより重要性を増しているといえるでしょう。
②その他の行政主体
国及び地方公共団体の他には、包括的な行政権限を持つ行政主体は存在しませんが、行政に属する一定の事業を実施するために、特別の法律に基づき設けられる独立の法人があり、これらの法人には行政主体としての地位が認められます。
(1)独立行政法人・地方独立行政法人
独立行政法人は国が実施してきた行政のうち、試験研究、文教研修、医療厚生などの特定の部門に属する事務などを国の行政から分離し、独立して行わせるために設立される法人です。
行政運営の効率化と行政組織のスリム化を目指す行政改革の一環として制度化されたものです。その例として、独立行政法人通則法と個別法により、国立公文書館、大学入試センター、国立美術館等が独立行政法人とされています。
地方独立行政法人も、同様の趣旨によって、地方公共団体の行ってきた行政事務の一部を地方公共団体と切り離して運営させるために設立された法人です。地方独立行政法人法を根拠としています。
(2)特殊行政法人
特殊法人とは、行政に属する特定の事業を実施するために、特別の法律に基づいて設けられる法人であり、これには営造物法人と公共組織があります。
・営造物法人
特定の法律に基づき、特定の公共的な事業を国や地方公共団体に代わって行うことを目的とし、公の資金の出資に基づき設置される財団的性格をもった法人です。その例として、日本中央競馬会、日本銀行、NHKなどがあります。
・公共組織
特定の法律に基づき、公の行政に属する特定の事業を行うために設立される社団的性格を有する法人です。その例として、土地改良区、土地区画整理組合、健康保険組合、商工会、商工会議所、農業共済組合などがあります。