行政機関は、作用法的行政機関概念を前提として、その権限に着目すると、次のように分類されます。
(1)行政庁
行政庁とは、行政主体の意思または判断を決定し、これを外部に表示する権限を有する機関です。
ここでいう行政庁とは、法令によって一定の権限を付与され、現実にその権限を行使する行政機関という意味です。
行政庁には、独任制と合議制がありますが、行政庁は独任制であるのが原則です。これは意思決定の機敏性を確保して行政需要に迅速に対応できるようにすると共に、行政責任の所在を明確にするためです。
ちなみに、合議制の行政庁の例としては、公正取引委員会、人事院、会計検査院、公安委員会、教育委員会などがあります。行政庁の判断に政治的中立性や専門的技術的な知見を必要とする場合には合議制の行政庁が設置されます。
(2)諮問機関
行政庁の諮問に応じて調査・審議を行った上答申し、または自発的に意見を述べる機関です。
諮問機関の答申は、参与機関の場合と違って、法的には行政庁の意思決定を拘束しません。諮問機関の答申はいわば「参考意見」であって、行政庁は、諮問機関の答申に沿った意思決定をしなくても違法ではありません。
ただし、諮問手続が法律上義務付けられているのに、行政庁がその手続を経ることなく行った決定は、特段の事情のない限り、手続き上の瑕疵にあたり、決定そのものが違法となります。
(3)参与機関
行政庁の意思決定を拘束する議決を行う機関です。
行政庁は参与機関の議決に反する意思決定はできず、参与機関の議決を経ずに行った行為は無効となります。
(4)監査機関
監査機関は行政機関の事務や会計の処理を検査し、その適否を監査する機関です。
総務省や行政評価事務所、会計検査院、地方教協団体の監査委員などが監査機関にあたります。
(5)執行機関
行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関です。
実力行使とは、行政上の義務を課せられた者が、任意にその義務を履行しない場合に行政上の強制執行をしたり、緊急の必要があるときに即時強制を行ったりすることです。
警察官、消防官、自衛官、徴税職員などがこれにあたります。
(6)補助機関
行政庁その他の行政機関の職務を補助するために、日常的な事務を遂行する機関です。