(1)法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為
行政行為の分類について、個々では「法律行為的行政行為」と「準法律行為的行政行為」の区別を押さえておきましょう。
この分類は、民法の「法律行為」「準法律行為」という分類の仕方をベースにしています。そこで、民法で言う法律行為及び準法律行為の意義を確認しておきましょう。
「法律行為」とは、当事者の内心の意思に基づき、その意思内容通りの効果を生じさせる行為です。
「準法律行為」は、当事者の認識や判断の表示に法が一定の効果を与えるものです。
①法律行為的行政行為
法律行為的行政行為は、行政庁の意思表示を要素とし、法効果の内容が行政庁の意思によって定められる行政行為です。
②準法律的行政行為
一方、準法律的行政行為は、行政庁の認識・判断など意思表示以外の判断作用を要素とし、行政庁の意思とは関係なく、法の規定によって一定の効果が付与される行政行為です。
③両社の区別の意義
なぜ、こんなややこしい区別をするかというと、法律行為的行政行為は、意思表示を要素とするものだから裁量の余地があり、かつ附款も付し得るが、意思表示を要素としない準法律行為的行政行為には裁量の余地がなく、また附款を付す余地もないことを明らかにするためです。
(2)行政行為の分類とその種類
①法律行為的行政行為
法律行為的行政行為は、命令的行為と形式的行為に分けられます。
(ⅰ)命令的行為
命令的行為とは、国民に対し、国民がもともと有している自由を制限して一定の作為義務・不作為義務を課し、またはこれらの義務を免ずることを内容とするものです。これは次の3つがあります。
(イ)下命・禁止
下命とは、国民に対し、「●●をせよ」ちう作為義務を課し、または「●●をするな」という不作為義務を課する行政行為です。後者を「禁止」といいます。
(ロ)許可
許可とは、法令または行政行為によって既に課されている一般的な禁止を特定の場合に解除し、適法に特定の行為をすることができるようにする行政行為です。車の運転免許がこれにあたります。
許可を必要とする行為を許可を受けないで行った場合は、違法行為として処罰されたり、行政上の強制執行の対象となりますが、その行為が当然に無効となるわけではありません。
(ハ)免除
免除とは、法令または行政行為によって既に課されている作為義務または受忍義務を特定の場合に解除する行政行為です。児童の就学義務の免除、租税の免除などがこれにあたります。
(ⅱ)形成的行為
形成的行為は、国民が本来有してない法律上の権利や資格、その他の地位を設定・変更・消滅させる行政行為です。
(ニ)特許
特許とは、特定の人のために新たな権利を設定し、その他権利能力や法律上の地位を付与する行政行為です。
これらは設権行為(せつけんこうい)と呼ばれます。
また、設定された権利・権利能力・法律上の地位などを消滅させる行為は剥権行為(はっけんこうい)と呼ばれます。
※ちなみに、特許(パテント)は行政行為の種類としては準法律行為的行政行為である「確認」にあたります。
※※「許可」と「特許」の違いについて
「許可」とは本来有している地位の回復
「特許」とは本来有していない地位の授与
という性質があります。
従って、「許可」の場合は原則として要件をクリアしている場合は地位が付与されます。
一方「特許」の場合には必ずしもその限りではありません。
(ホ)認可
認可は、私人間の契約・合同行為などの法律行為を補充してその法律上の効果を完成させる行政行為です。
農地の権利移動の許可、河川占用権譲渡の承認、公共料金の認可などがその例です。
認可は法律行為を完成させる行為ですから、認可を要すべき行為について認可を受けないでした法律行為はその効力を生じません。
例えば、農地の権利移動には、農地法上の許可が必要であり、これがないと農地の売買契約は効力を生じm線。電気料金や鉄道運賃の変更(値上げ)にも認可が必要です。もっとも、許可はあくまでも本体である私人の法律行為を補充する行為に過ぎないため、そこに瑕疵があるときは、許可後であっても、その取消しを主張することができます。
(へ)代理
代理とは、本来は第三者が行うべき行為を国または地方公共団体等の行政主体が代わって行うことにより、その第三者が自分で行ったのと同様の効果を生じさせる行政行為です。
当事者間の協議が調わない場合に、行政庁が代わってする裁定などがその例です。土地収用において、収用委員会の行う裁決などがこれにあたります。
②準法律行為的行政行為
準法律行為的行政行為には、以下の4つがアルマス。これらの行為は、法律によって一定の法的効果が付与されることから、単なる事実行為ではなく行政行為とされるものです。
(ⅰ)確認
確認とは、ある特定の事実または法律関係に関して疑いや争いがある場合に、公の権威を持って、その存否・真否について判断し確定する行政行為です。
その例としては、発明の特許、所得税額の構成、市町村の境界の確定、当選人の決定、河川区域の認定等があります。確認は、判断の表示に過ぎませんが、それによって行政庁の意思に関わりなく、法律で定められた一定の効果が生じます。
(ⅱ)公証
公証とは、特定の事実または法律関係ん存否を公に証明する行政行為です。その例としては選挙人名簿への登録、不動産登記、戸籍簿への記載等があります。
(ⅲ)通知
通知とは、特定の人または不特定多数の人に対して一定の事項を知らせる行政行為です。
その例としては、納税の督促、特許出願の公開、代執行の前提としての戒告・通知などがあります。
行政行為としての通知となるのは、法律によって一定の効果が付与される場合に限られます。
例えば、代執行の通知は、それによって行政庁が代執行可能な地位を取得するという効果を生じます。
何の法効果も生じない単なる事実行為(催し物の案内状の通知、公報の送付など)と区別することが必要です。
(ⅳ)受理
受理とは、申請や申し立てを有効なものとして受け付ける行政行為です。各種申請書、届出書、不服申立書の受理がこれにあたります。
行政行為の意義・特質、種類、裁量、附款 ③行政行為の種類
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