法学にはいくつかの法諺とよばれる、所謂「法の諺」があります。
ここではそのいくつかを紹介します。
「よき法律家は悪しき隣人」
物事をすべて法的思考で割り切ろうとすると、融通の利かない、ある意味で常識から離れた独善的傾向に陥ってしまいます。この法諺は法律家のこのような悪癖を揶揄するものです。
「悪法もまた法なり」
内容の不当な法であっても、法として制定され通用している以上、それに違反することは許されず、裁判官もその方の適用を回避することは許されない。これは法の権威を表す法諺です。
「法は権利の上に眠る者を保護しない」
権利を有する者であっても、その権利を長期間行使しないで放置しているとその権利は時効により消滅し、もはやその権利を行使できなくなる。時効制度の存在理由を表す法諺です。
「緊急は法をもたない」
法治国家においては、国民権利の救済は、国家の設営する裁判制度により行われなければならないのが原則であるが、国家による司法的救済の暇のない緊急の事態においては、例外的に私人の実力による権利救済も認められる。自力救済を正当化する法諺です。
「法律なければ犯罪なし。法律なければ刑罰なし」
近代刑法の大原則である「罪刑法定主義」を表すものです。一定の行為を犯罪とし、人に刑罰を科すためには、明文の法律が存在していなければならない、ということを意味するものです。刑罰権の乱用を阻止するとともに、国民の自由を保障するという機能を果たします。