行政行為は、行政庁の一方的な行為によって私人の権利義務に変動を生じさせる行為ですが、まずこれを私人相互間の権利義務の変動と対比して考えてみましょう。
私人間における権利義務の変動は、当事者の意思に基づく契約によって行われるのが原則です。
例えば、AがBの土地を取得したいと思えば、Bに売却の申し込みをし、Bがこれに応じてAに承諾を与えることによって売買契約が成立し、Aは、Bの土地を取得することができます。当然のことながら、Bが土地の売却を拒否すれば、AはBの土地を取得することはできません。私人Aには、Bに対して「売渡命令」を発して強制的に土地を取得する権限はないからです。
しかし、行政庁には、その行政目的を達成するために、法令上認められた行政行為という手法により、私人である相手方に対して一方的に権利変動を生じさせることが認められています。
一定の公共事業のために用地を確保する必要があるのに、相手方である私人がどうしても土地の売却に応じない場合は、「土地収用法に基づく事業認定及び収用裁決」という行政行為を経て強制的に土地を習得することもできるのです。このように、行政庁の公権力の一方的な発動により、国民の権利義務に変動を生じさせる行為が行政行為といわれるものです。
ここで、「土地収用法に基づく事業認定及び収用裁決」について。
土地収用は「事業認定」と「収用裁決」という二段階の手続きを経て行われます。
「事業認定」とは、国土交通大臣または都道府県知事が、その事業に収用を認めるに足りる公益性があるかどうか等の事項を審査するものであり、この事業認定がなされることを条件に次の収用裁決の手続きに移行します。
「収用裁決」は、都道府県に設置された収用委員会が行います。この手続きにおいては、まず収容する土地の区域の他、土地または土地に関する所有権以外の権利に関する損失補償と権利取得の時期に対する採決(権利取得採決)がなされ、さらに、収用する土地の引き渡し、物件の収去とこれに伴う損失補償についての採決(明渡裁決)が行われます。事業を行う者(起業者)は、以上の手続きを経た後補償金を支払って初めて土地を取得することになります。
行政行為の意義・特質、種類、裁量、附款 ①行政行為の意義
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