行政法の根幹となる原理は「法律による行政」です。
概して言えば「行政は法律に従って行われなければならない」ということです。
これは「法治主義」と同義で、政治学上では「行政からの恣意的な国民の権利への侵害を守ろうぜ!」というニュアンスがあります。
このような沿革を持つ近代行政法は「防御権の体系」と呼ばれることがあります。
この「法律による行政」の原理から
1)法律の法規創造力
2)法律の優位
3)法律の留保
という三つの原則が導かれます。

1)法律の法規創造力
民主主義に立脚すると、「独自に国民の権利義務に関わる法規範を作ってはならない」ということを意味します。
例外として憲法73条6号は行政機関の制定する法規、すなわち命令の存在を予定した規定を置いています。
これは現代社会では行政需要が爆発的に増大しており、行政機関に一定範囲で法規範の定立を認めざるを得ないからです。
2)法律の優位
全ての行政活動は、法律に違反して行うことができない、という原則です。
つまりは、「法律を守りさえすれば不当な扱いを受けることはない」ということで、まさに「防御権の体系」です。
この原則により、法律に違反して行われた行政活動は取り消しの対象となり、あるいは無効とされることになります。
3)法律の留保
法律の留保とは、行政機関が一定の行政活動を行うには、あらかじめ法律によってその権限が定められていなければならないという原則です。
法律の優位の原則は、行政活動を規律する法律が存在する場合には行政はそれに従わなければならないという意味を持つに過ぎませんが、法律の留保は、一定の行政活動を行うにはその根拠となる法律を必要とするという、より積極的な内容を持つ原則です。
法律の優位と法律の留保は違いが少々分かりにくいですが、
法律の優位は「法律に違反しちゃダメ」
法律の留保は「根拠となる法律がなきゃダメ」
という感じです。
法律の留保の範囲については「国民の自由は財産を侵害するような行政活動を行うときは、法律の根拠を必要とするが、それ以外は必要としない」が慣例です。これを侵害留保説といいます。
例えば課税等は法律の根拠を必要としますが、補助金等はしません。
この範囲の考え方については侵害留保説の他に
全部留保説(すべての行政活動に法的根拠が必要)
権力留保説(行政が優越的立場から一方的に行う行政活動には必要)
重要事項留保説(国民の自由や平等に関わる重要事項には必要)
があります。