(1)意義
行政行為の主たる意思表示に付加された従たる意思表示を附款といいます。
この附款により、行政行為の内容を制限し、あるいは特別の義務を課するという効果が生じます。
附款は主たる意思表示の内容を制限するものですから、意思表示を要素とする法律行為的行政行為にのみ付すことができ、意思表示を要素としない準法律行為的行政行為には付すことができません。
尤も法律行為的行政行為であれば、行政庁が全く自由に附款を付すことができるというわけではなく、そこには自ずから一定の限界があります。
すなわち、法律で附款を付し得ることが明示されている場合は当然のこととして、そのような明示の定めがない場合は、行政行為の内容について行政庁に裁量権が認められていることを前提として、その裁量の範囲内で付すことができます。
したがって、行政庁の裁量の余地のない覊束行為については附款を付すことができません。
さらに、附款を付し得る場合においても、どんな内容の附款でも無制限に付し得るわけではありません。
附款の内容は、当該行政行為の目的を達成するために必要なものでなければならず、また附款によって行政行為の相手方に課す義務は、必要最小限のものでなければなりません。
(2)附款の種類
①条件
条件とは、行政行為の効果の発生または消滅を将来の不確定な事実の成否にかからせる意思表示です。
条件には、その事実の発生によって行政行為の効果を生じさせる停止条件
逆に降下を消滅させる解除条件
があります。
例えば、会社の成立を条件としてえいぎょう免許を与える場合は停止条件、道路補修の完了を条件として通行止めを解除する場合は解除条件ということになります。
個人的には停止条件と解除条件はややこしくて混同しやすいと思います。注意して覚えてください。
②期限
期限とは、行政行為の効果の発生を将来において到来することの確実な事実の発生にかからせる意思表示です。
行政行為の効果が期限の到来によって発生する場合を始期、逆に消滅する場合を終期といいます。
③負担
主たる意思表示に付随して、行政行為の相手方に対し、これに伴う特別の義務を命ずる意思表示です。
負担は、許可、認可などの授益的行政行為に付されるものです。身近な例としては運転免許に際して「眼鏡使用」w義務付けることなどがあります。
負担付きの行政行為においては、相手方が負担に従わなくても、本体である行政行為自体の効力が当然に失われることはありません。ここが条件との違いです。
④取消権(撤回権)の留保
行政行為の主たる内容に付加して、特定の場合に行政行為を取り消し得る(撤回する)権能を留保する意思表示のことです。
「取消し」という文言は学問上の分類としては「撤回」に該当することが多いです。
行政行為の取消し(撤回)は、それによって相手方に不利益となる場合には、自由に行うことはできず、限界があります。
従って、行政行為に取消権(撤回権)が留保されていたとしても、それを妥当とするだけの十分な合理的理由がなければ、取消し(撤回)は許されません。
⑤法律効果の一部除外
行政行為をするにあたり、法令が一般にその行政行為に付した効果の一部を発生させないこととする意思表示です。
その例としては、公務員の出張に際して、出張を命じながらその旅費を一定額で打ち切る場合が挙げられます。
(3)違法な附款の効力
附款も行政行為の一部を成すものですから、行政行為に付加された附款が違法である場合、その附款は無効あるいは取り消し得るものとなります。
その場合、本体たる行政行為の効力にどのような影響が及ぶのでしょうか?
この点については、その附款が当該行政行為の重要な要素であるときは、附款と行政行為を含めた全体が違法となり、附款が重要な要素でないときは、附款のついていない行政行為として効力を生じると解されています。
そうすると、附款の違法性を取消訴訟で争う場合は、どのような形で訴えを提起すべきでしょうか。
この点、附款が行政行為の重要な要素ではなく、本体である行政行為から切り離すことが可能であれば、附款だけの取消訴訟を提起することができます。
しかし、附款が行政行為の重要な要素であり、行政行為と不可分一体の関係にあるときは、附款の違法は本体である行政行為の全体に及ぶことになります。
したがって、この場合は、附款だけを本体である行政行為から分離して、附款だけの取消訴訟を提起することはできず、行政行為全体の取消訴訟を提起しなければなりません。