意見公募手続は、命令等の制定の民主化という観点から、いわゆるパブリックコメントの手続を導入したものです。
すなわち、命令等の制定に際して国民の多様な意見を聞いて、それを考慮しながら最終的な決定を行うという制度です。

(1)命令等を定める場合の一般原則
意見公募手続の対象となる「命令等」とは、内閣または行政機関が定めるもので、法律に基づく命令または規則、審査基準、処分基準および行政指導指針のことです。
法律に基づく命令とは、政令、省令を指しますが、これには処分の要件を定める告示も含まれます。
命令等を定める機関は、命令等を定めるにあたっては、それらの命令等が、これを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければなりません。
「法律による行政の原理」からは、行政機関の定める命令等が、その根拠となる法令の趣旨に反してはならいのは当然のことですから、この規定は、この原則を確認したものと言えるでしょう。

(2)意見公募手続
命令等を制定する際の意見公募手続は
①行政機関による案の作成・公示
②意見の募集
③提出意見の考慮・命令等の作成
④結果の公示
というプロセスを経て行われます。
①命令等の案の公示
ここでいう命令等の案とは、命令等で定めようとする内容を示すものです。
案と言ってもそれは具体的かつ明確な内容のものであって、かつその命令等の題名及びその命令等を定める根拠となる法令の条項が明示されたものでなければなりません。
命令等の案の公示にあたっては、関連する資料も合わせて公示することが義務付けられています。
なお、公示の方法としては、インターネットの利用が想定されています。
②意見の募集
(ⅰ)意見提出権者
命令等制定機関は、「広く一般の意見を求めなければならない」とされ、意見を提出できる者の資格は限定されていません。したがって、日本国民だけでなく、外国人も含まれ、またその命令等に対して利害関係を有している必要もありません。
(ⅱ)意見提出期間
意見の提出のための期間は、命令等の案の公示の日から起算して30日以上でなければなりません。
もっとも、30日以上の期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、30日を下回る意見提出期間を定めることも例外的に許されます。
「やむを得ない理由」とは、例えば、命令等の制定期間が法定され、その期限が迫っているような場合です。この場合は、案の公示の際にその理由を明らかにすることが義務付けられています。
(ⅲ)意見公募手続の周知・情報の提供
意見公募手続を実施するとしても、その手続が採られていることが一般に周知されていなければ、意見が集まるはずがありません。
そこで、命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるにあたっては、必要に応じ、その意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、その実施に関連する情報の提供に努めることとされています。
③提出意見の考慮・命令等の策定
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して寄せられた意見を必ず採用しなければならないというわけではありませんが、その意見を十分に考慮しなければならないとされています。
これは、命令等制定機関に提出された意見を真剣かつ十分に考慮して命令等を制定すべき義務を課するものです。
提出意見を考慮した結果及びその理由の公示が義務付けられているのは、この義務の履行を間接的に担保する趣旨と言えるでしょう。
④結果の公示
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、その命令等の公布と同時期に、次の事項を公示しなければなりません。
(ⅰ)命令等の題名
(ⅱ)命令等の案の公示の日
(ⅲ)提出意見
(ⅳ)提出意見を考慮した結果及びその理由
意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、その旨並びに命令等の題名、命令等の案の公示の日を速やかに公示しなければなりません。