教示とは、わかりやすく言えば、処分を行う行政庁が、その処分によって不利益を受ける相手方や利害関係人に対し、「文句があるのならこういう方法があるぞ」と教えてくれる制度です。
行政不服審査の制度は、国民に十分に周知されているとは言い難く、また処分を受ける者が不服申し立てできることを知っているとしても、行政組織は複雑であるため、どの行政庁に不服申し立てをすべきか、 さらに不服申し立てのできる機関等についても正確に認識しておかなければ、みすみす権利行使の機会を逸してしまうことになりかねません。
そういうわけで、行政庁の処分により不利益を受ける国民の権利利益の救済のために、教示の制度が設けられています。
教示が義務付けられているのは、審査請求、再調査の請求又は他の法令に基づく不服申し立てをすることができる処分をするに際し、相手方に対して書面で 処分を行う場合及び利害関係人から教示を求められた場合です。
(1)教示すべき事項とその相手方・方法
処分をするに際して表示が義務付けられている事項は、次の3つです。
①不服申し立てをすることができる旨
②不服申し立てをすべき行政庁
③不服申し立てをすることができる機関
行政庁は、処分をするに際しその相手方に対しては、特に求められなくても 上記の事項を教示しなければなりません。
処分を口頭でする場合を除いて、書面に教示する必要があります。
利害関係人に対しては、求めがあったときに上記の所定事項を教示しなければなりません。
その際、利害関係人から書面による教示を求められたときは、書面でしなければなりません。
(2)行政庁の教示に瑕疵がある場合の効果
重要なのは、教示すべき事項を教示しなかった場合及び教示の内容を誤った場合です。
そのような場合には、処分の相手方等に不利益が及ばないような方策がたてられています。
①行政庁が、上記の矜持をしなかったとき
この場合、当該処分について不服があるものは、とりあえず処分庁に不服申し立て書を提出することができます。
当該処分が、処分庁以外の行政庁に対し審査請求をすることができる処分であるときは、処分庁は速やかに当該不服申し立て書を 審査庁に送付することが義務付けられています。
送付されたときは、初めから権限ある行政庁に不服申し立てがなされたものとみなされます。
②行政庁が、教示の内容を誤ったとき
行政庁が教示の内容を誤るパターンとしては次のような場合があり、それぞれ一定の手続き(書面のやりとり)を経て審査請求人の救済が図られます。
(ⅰ)審査請求をすることができる処分につき、 処分庁が誤って審査庁でない行政庁を審査庁として教示し、その教示された行政庁に書面で審査請求がなされた
このケースでは、審査請求書を受けた行政庁は、速やかに、その審査請求書を処分庁又は本来の審査庁に送付します。
処分庁に送付されたときは、処分庁が本来の審査庁に送付することになります。
(ⅱ)再調査の請求をすることができない処分につき、 処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示したため、当該処分庁に再調査の請求がなされた
(ⅲ)再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかったために、当該処分庁に再調査の請求がされた
上記(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)のいずれの場合も審査請求書や再調査の請求書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときに初めから 審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなされます。
(ⅳ)再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を表示しなかったために審査請求がなされた
この場合、審査請求人の申し立てにより、審査庁から処分庁に審査請求書等が送付されたときは、初めから処分庁に再調査の請求がなされたものとみなされます。
審査請求の心理手続 ⑥教示
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