行政事件訴訟の最も大きな分類の仕方として、主観訴訟と客観訴訟の区別があります。
主観訴訟は、行政の違法な行為によって国民個人の権利利益が侵害され、又は侵害されそうになっている場合に、その救済を求めるもので、行政不服審査と同様の目的を持つものです。
これには、抗告訴訟及び当事者訴訟の2つがあります。
例えば、飲食店業を 営んでいるAが、違法にその営業免許を取り消された場合、Aは、自分の個人的な利益(法律上の利益)を守るために、抗告訴訟の一種である処分の取り消しの訴えを裁判所に起こすことができます。
ここでは、原告となるべきものに「法律上の利益」のあることが訴え提起の要件とされています。
客観訴訟は、行政の活動が法に反して行われている場合に、 個人に帰属する主観的利益とかかわりなく適法状態を回復する、言い換えると客観的な法秩序の維持を目的とするもので、これには民衆訴訟と機関訴訟の2つがあります。
例えば、民衆訴訟の一種である選挙訴訟は、選挙が違法に行われたことを理由として、その無効の宣言を求めるものです。
ここでは、原告となるべき者の個人的な利益が直接に侵害された事は要件とされていません。
なぜなら、選挙訴訟は、原告個人の主観的利益の保護を目的とするものではなく、違法な選挙の効力を否定して適法な状態を回復する、すなわち客観的な法秩序を維持することが目的とされているからです。
このように、民衆訴訟では、個人的な利益の侵害とは無関係に訴えを提起することが認められているわけです。
以上のように、主観訴訟において原告となるべきものに法律上の利益が要求 されているのは、それが個人的利益を保護することを目的とし、客観訴訟において原告となるべきものに法律上の利益が要求されていないのは、客観的な法秩序を維持すると言うその目的の差異に由来します。
もっとも、主観訴訟も、違法な行政処分の取り消し等を通じて、行政の適正な運営を確保するという機能も併せ持っていますから、個人的には客観的な法秩序の維持を目的とするといえます。
裁判による救済ー行政事件訴訟の枠組み ②主観訴訟と客観訴訟
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