行政行為は、外部に表示されることによって成立します。
行政内部で意思決定がなされ、それを記載した書面が作成・用意されていたとしても、それだけでは有効に成立したとは言えません。
さらに、行政行為が相手方との関係でその効力が生じるためには、相手方に告知されることが必要です。
告知は、通常、口頭または書面によってなされますが、相手方が不特定である場合や住所・居所が不明であるときは、公示の方法が採られることもあります。
相手方への告知によて生ずる行政行為の効力としては、公定力、執行力、不可争力、不可変更力の4つがあります。
このうち、不可変更力は、一定の行政行為(紛争裁断行為)についてだけ認められる例外的な効力です。

(1)公定力
行政行為は、たとえその行為に瑕疵があり違法であったとしても、それが重大かつ明白な瑕疵ではない限り、権限ある行政庁または裁判所によって取り消されるまでは、有効な行政行為として通用します。
つまり、違法な行政行為であってもその相手方はもちろん、他の行政庁、裁判所、第三者もその有効性を承認しなければならないのです。これを行政行為の公定力といいます。
公定力については、これを認めた明文の規定はどこにもありません。
しかし、後述するように行政事件訴訟法は、違法な行政行為については取消訴訟の制度を定め、違法な行政行為であっても取消判決によって取り消されない限り、その効力は維持されるという建前を採っています。
このことを称して「取消訴訟の排他的管轄」といます。
このように、違法な行政行為についても、取消訴訟によってその効力が否定されない限り、原則として有効なものとして扱われるという法制度は、行政行為に公定力が認められることの説明になるとされています。

(2)執行力
行政行為によって命ぜられた義務を相手方が任意に履行しない場合、行政庁が自らその義務の内容を実現することができます。
これを行政行為の執行力または自力執行力といいます。
私法上の金銭債権を債務者が任意に弁済しないとき、債権者は、執行力の付与された債務名義をもって裁判所に強制執行を申し立て、民事執行法所定の手続きを経て強制的に債権の実現を図ることができます。
つまり、民事上の債権の実現は裁判所の関与する強制執行手続きに依ることになります。
しかし、行政行為によって命じられた義務を相手方が任意に履行しないときは、行政庁は、裁判所の手を借りることなく、自らその義務の内容を実現することができるのです。
尤も、国民に義務を課する行政行為の全てに執行力が認められるわけではなく、それを認めた法律の存在を前提とします。
租税に関しては、国税徴収法という法律の規定により、滞納処分という強制執行の方法が認められています。したがって、納期限までに税金を納めないときは、国税徴収法所定の手続きを経て強制的に税金を取り立てられることもあり得ます。

(3)不可争力
行政行為に瑕疵があって、権利利益を侵害された国民は、行政庁に対する不服申し立て、あるいは裁判所に対する取消訴訟の提起によって、その行政行為の取消を求めることができます。
しかし、不服申し立て、取消訴訟には、それぞれ期限的な制限があり、その期間を経過してしまうと、もはや不服申し立て取消訴訟等の「争訟」による取消しの道は閉ざされてしまいます。
このように、不服申し立て、取消訴訟の期間的制限により、争訟による取消の手段を失わせる効力を不可争力といいます。
ちなみに、行政行為を行った行政庁自身が職権で行政行為を取り消すことは認められていますし、重大かつ明白な瑕疵のある行政行為については、そもそも不可争力が生じません。(無効なため)

(4)不可変更力
行政行為は、法に従い公益に適合するものでなければなりません。
従って、行政行為が違法または不当であるとき、それを行った当の行政庁は自らその行為を取り消すことができるのが原則です。
しかし、行政行為のなかには、それを行った行政庁自身を拘束し、その行政庁が自ら取り消すことができなくなるものがあります。それは、行政行為をめぐる紛争について、行政庁の行った紛争裁断行為です。
どういうことかというと、行政行為に不服のある者は、個別の法律の規定または行政不服審査法の規定に基づきその取消しを求めて検眼ある行政庁に対して不服申し立てをすることが認められます。
不服申し立ては、原則として再審請求という手段で行いますが、個別の法律で再調査の請求という手段が認められている場合があり、再調査の請求に対する行政庁の応答は決定、審査請求に対する応答は裁決と呼ばれます。
さらに、審査請求の裁決に対しては、個別の法律で再審査請求が認められている場合があり、これに対する応答も裁決と呼ばれます。
これらは、いずれも紛争の解決策を示すという意味を持つ行政行為であって、それらを行った行政庁は、自ら行った決定、裁決を取り消すことはできません。
これを不可変更力といいます。
行政庁がいったん示した紛争の解決策をまた取り消すkとができるとなると、いつまで経っても延々と紛争がつづいてしまうことにもなりかねません。
そこで、いったん権限ある行政庁が行った決定・裁決は自ら取り消すことができないとされているのです。
個人的には、この状況、小学校の席替えに似ている気がします。
くじ引きで席が決まった後に、「俺、目が悪いから一番前ね」とか言って席を変わるみたいな。
どうですかね(笑)
ちなみに、繰り返しになりますが、不可変更力は一定の行政行為(再調査の請求に対する決定、審査請求、再審査請求)についてだけ認められる、例外的な効力です。
全てに認めていたら、自分で自分の首を絞めることになるのは想像に難くありません。