行政不服審査法の定める不服申し立てには、審査請求、再調査の請求、再審査請求の三つの種類があります。
(1)不服申し立ての種類とその申し立て先
①審査請求
(ⅰ)意義
審査請求は、処分または不作為に対する原則的な不服申し立ての手段として位置づけられています。
すなわち、行政庁の処分または不作為に不服がある者は、審査請求の審理をする権限のある行政庁に対して審査請求をすることができます。
処分をした行政庁を処分庁、不作為の状態にある行政庁を不作為庁といい、併せて処分庁等といいます。
審査請求の審理をする審査庁は、一定の審理手続を経てその最終的な応答を裁決という形で示さなければなりません。
(ⅱ)審査請求の申し立て先-どの行政庁に審査請求できるか
どの行政庁に審査請求をするかについては、行政不服審査法の定め方がややこしいので、まず処分庁等に上級行政庁がない場合と上級行政庁があある場合とに大別した上、上級行政庁がある場合の原則と例外を整理して理解するのがベターでしょう。
(イ)処分庁・不作為庁に上級行政庁がないとき
処分庁等に上級行政庁がないときは、その処分または不作為について当該処分庁等に対して審査請求をすることになります。
(ロ)処分庁・不作為庁に上級行政庁があるとき
審査請求は、処分庁等に上級行政庁があるときは、その処分庁等の最上級行政庁に対して提起することになります。
つまり、この場合最上級行政庁が審査庁となります。
これだけだと単純でわかりやすいのですが、処分庁等に上級行政庁がある場合は、次のような特例が設けられ、いささか複雑な様相を呈しています。
処分庁等が、主任の大臣、宮内庁長官または内閣府や各省に置かれた外局の長であるときは、審査請求は、当該処分庁等に対してすることになります。
例えば、処分庁等が財務省の外局である国税庁長官であれば、その上級行政庁は財務大臣ですが、この場合の審査請求は、国税庁長官に対してすべきことになります。
また、主任の大臣、宮内庁長官または内閣府や各省に置かれた外局の長が処分庁等の上級行政庁であるときは、審査請求は、主任の大臣、宮内庁長官または当該庁の長に対してすることになります。
例えば、処分庁等の上級行政庁が国土交通大臣であれば、その最上級行政庁として内閣が存在しますが、この場合の審査請求は、内閣ではなく国土交通大臣に対してすることになります。
②再調査の請求
(ⅰ)意義
再調査の請求とは、行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求ができる場合に、処分庁に対して不服を申し立てる手続です。
再調査の請求に対する処分庁の応答を決定と言います。
行政庁の処分に不服がある者は、審査請求により不服を申し立てるのが原則です。
しかし、大量の不服申し立てがなされる処分については審査請求先の審査庁の負担の軽減を図る必要があり、また処分の性質によっては、その事案や内容等を容易に把握できる処分庁に対して簡易・迅速な手続で事実関係を再度調査させ、その見直しを求める方が合理的と言えるでしょう。
そこで次の要件を満たした場合に限って、審査請求とは別に、処分庁に対する再調査の請求もできることとされています。
(ⅱ)要件
再調査の請求は、処分庁以外の行政庁に審査請求ができる場合において、個別の法律に再調査の請求ができる旨の定めがある場合に限ってすることができます。
その例として、国税通則法に、国税に関する税務署長の処分に不服があるときは、国税不服審査所長に対する審査請求のほか、再調査の請求ができる旨の定めがあります。
しかし、審査請求をした場合には、再調査の請求をすることはできません。
また、再調査の請求をしたときは、処分庁による当該再調査の請求の決定を経た後でなければ、原則として審査請求をすることができません。
例外的に、次の二つの場合には再調査の請求の決定を経ることなく、審査請求をすることができます。
そして、下記①または②の事由により審査請求をしたときは、再調査の請求は取り下げられたものとみなされます。
①再調査の請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
②その他再調査の決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
(ⅲ)再審査請求
(ⅰ)意義
再審査請求は、審査請求の裁決がなされた後、その裁決に不服がある者がすることができます。
つまり、再審査請求ができるときは、審査請求及び再審査請求という二段階の不服申し立てができるわけです。
(ⅱ)要件
まず、再審査請求は、行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがるときにすることができます。
審査請求の裁決に不服があるからといって常に可能と言うわけではありません。
また、再審査請求は、個別の法律で定められた行政庁に対してすることができます。
例えば、生活保護法は、市町村長からの委任を受けた福祉事務所長が行なった処分については、都道府県知事に対する審査請求を認め、その裁決に不服があるときは、さらに厚生労働大臣に対する再審査請求を認めています。
再審査請求においては、審査請求を受けた審査庁が行なった裁決または審査請求人が受けた処分のどちらかを対象することもできます。